愛好会事務所にある、アレ(STAGEPAS 600BT)を使ってみよう!
いつも事務所のステージに鎮座している、あのスピーカー、そして島袋のデスク脇にあるケーブルがたくさん刺さった何かの機器。
あれは、YAMAHAの簡易PAシステム、STAGEPAS 600BTという音響機材です。
PAというのは、「パブリック・アドレス(Public Address)」の略称で、「音を大衆(Publicは公衆、大衆という意味です)に向けて伝達する(Addressは何か特定の場所または人に向けて伝える、という意味合いがあります)」という雰囲気で理解すると良いかと思います(理解してなくても、「音をみんなに聴こえるように出してくれる何かをPAって言うんだな〜、的な感じで大丈夫)。
YAMAHA STAGEPAS 600BTは、本格的なPAシステムというよりは、素人でも扱うことができる、簡易的かつポータブルなシステムとなっています。
なので、取り扱いはそれほど難しくはありません!
舞台にスピーカーとミキサーを配置します。
まずは、ミキサーを取り出します。
スピーカーの裏面に、ミキサーと収納ボックス(電源コード1本とスピーカーケーブル2本入り)があります。
下記の右側、黄色い点線で囲った部分がミキサーです。
そもそもミキサーとは一体何かと言いますと、
愛好会の場合、4本のマイクからそれぞれ歌と三線、そして時折パソコンからのギターやピアノ音源をミックスさせているわけですね。
ミキサーは重量があるので両手でゆっくり取り出しましょう。
次に、電源コードとスピーカーケーブルを取り出します。
収納ボックスがあるのは、ミキサーではないほうのスピーカーの裏側(水色の枠)。
中に、電源コード1本、スピーカーとミキサーをつなぐためのケーブルが2本、入っています。
上の画像の、黄緑色の枠内が、電源コード(黒いもの)とスピーカーケーブル(赤黒2本)です。
上記、ミキサーとケーブル類が揃ってなかったら、せっかく運んだ重い機材が無用の長物になってしまいますので、設置の前に全て揃っていることを確認しましょう。
スピーカーのスタンドを立てよう。
スピーカースタンドは、長さ120センチくらいの大きな黒いボストンバッグ状のケースに入っています。
スタンドが2本入っている状態で、全体の重量が約8キロあります。持ち運びに気をつけてください。
スピーカースタンドは、三脚部分を好きな角度に広げることができます。
あまりに狭いと不安定ですし、かと言ってあまりに広げるとステージの上で足を引っ掛けて怪我をする可能性がありますので、下図のように横から見て三脚の脚とフロアが「正三角形」に見える程度に広げたら安定性と安全面とを両立できて良いかな、と思います。
スタンドは、高さの調節もできます。
高さを決めたら、軸に付いている金属棒を軸の穴に差し込んで固定します。
高すぎると危険ですので、二番目の穴に金属棒を差し込むとちょうどいいかな、と思います。
スピーカースタンドにスピーカーを載せよう。
この作業は、ぜひ男性陣にお願いしたい部分です。重いスピーカーを持ち上げて、スタンドをスピーカー下部の穴に差し込みます。
載せてしまったあとの移動は面倒なので、スピーカーを置く場所にスタンドを設置し、高さを決めて金属棒で固定してからスピーカーを載せるようにします。
スピーカーの下の面は図のようになっており、スタンド用の穴が空いています。
ここに、スタンドの軸を差し込んで、グレーのストッパーを下げて固定します(写真は、やや小型の400BTのものらしく、600BTのスピーカーはこれよりも大きめです)。固定したあとも、スピーカーの向きを変えることはできます。
スピーカーとミキサーの位置は、下図のような感じで。
会場の3D画像(自作です)に、ミキサーとスピーカーを配置してみました。
ミキサーは壁のコンセントの近くに置きます(次の行程で電源コードやケーブルを繋ぐので、ここでは置くだけです)。
スピーカーは、ミキサーからスピーカーケーブルが届く範囲(4メートル以内)に配置します。
ミキサーとスピーカーを繋ぎます。
スピーカー裏側の収納ボックスから出したスピーカーケーブル(赤黒)2本を、2個のスピーカーにつなぎます。
このとき、グレーのプラスチックの部品が付いている側(写真はないのですが、現物を見たらすぐ分かります)をミキサーに差し込むようにします。
差し込み口に「L/R」の表記がありますが、違いはないのでどちらでも構いません。
ミキサーに電源コードを差し込みます。
最初に、マスター音量をゼロにします。
ミキサーにコードを差し込んでから、壁(または延長コード)のコンセントに繋ぎます。
マイクをマイクスタンドに付けて、配置します。
キャノンケーブルについて。
ミキサーと、マイクを繋ぐケーブルのことをキャノンケーブル(またはXLRケーブル)と呼びます。
以降、このタイプのケーブルをキャノンケーブルと表記します。
キャノンケーブルの両端に付いている端子には「穴が開いている側」と「三本のピンがある側」があります。
「穴がある側」をマイクに、「ピンがある側」をミキサーに挿します。
写真の左が「穴がある側(マイクに挿す方)」、そして右が「ピンがある側(ミキサーに挿す方)」です。
マイク、キャノンケーブル、ミキサーを繋いでいきます。
ミキサーにはマイクや楽器からの音を入力する「穴」がいくつも開いています。上記キャノンケーブルを挿す穴も、そのひとつです。
この「穴」を「チャンネル」と呼んでいます。
STAGEPAS 600BTにはマイクを繋ぐことができるチャンネルが4つあります。
マイク、キャノンケーブル、そしてミキサーに番号を書いていますので、同じ番号のものを繋いでください(このとき、チャンネル1〜4の音量がゼロになっていることを確認してください)。
マイクスタンドを用意します。
マイクスタンドを組み立てます。
4本あるうち、3本は長く、1本だけ短いものがあります。
短いものは三線用にしてください。
マイクスタンドの使い方は下記の動画をご参照ください。
マイクの位置を決めて、マイクを配置します。
下の図は、三線&唄の演奏者が2名演奏できるようにした例です。
演奏者から見て右側に三線用マイク(下図③、④。腰くらいの位置)、顔の正面にボーカル用マイク(下図①、②)が来るようにします。
ミキサーのチャンネルが4つしかないので、これ以上マイクを増やすことはできません。
このとき、キャノンケーブルが短くてミキサーから届かない場合は適宜マイクを入れ替える等の工夫をお願いいたします(キャノンケーブルの長さがまちまちなのです)。
スピーカーから音を出します。
ミキサーの電源を入れます。
電源ボタンを押す前に、ミキサーの
- マスター音量がゼロ
- チャンネルの音量が全部ゼロ
- イコライザーはMUSIC
となっていることを確認します。下の写真をご参照ください。
次に、1〜4のチャンネルのマイクを接続したチャンネルの MIC/LINEスイッチをMIC(ボタンが出ている状態)にします。下図の青い枠のところです。
ここで、ようやく電源ボタンを押します。ポチッとな。
音の調整をしましょう。
リバーブボタンを押します。
リバーブというのは、カラオケでいうところのいわゆる「エコー」です。
残響音や反射音がなさそうなシンプルな空間に人工的にそのような音を作り出して、音に空間的な広がりや奥行きを与えます。ひらったく言うと、歌が上手に聞こえます。
STAGEPAS 600BTにはリバーブを加えるための機能が付いていますので、利用しましょう。
まずは下図のボタンを押します。
リバーブボタンの下の青いツマミが「PLATE」を指していることを確認します。
これで、リバーブの準備ができました。
あとはマイクで実際に歌って音を聴きながら、リバーブを徐々にかけていくことになります(後述します)。
マイクからの音をチェックします。
マイク本体に付いているON/OFFスイッチでマイクのスイッチをONにします。
次に、ミキサーのマスター音量を三角印のところまで上げます(下図参照)。
次に、マイク本体に付いている番号のチャンネルの音量(LEVEL)を少しずつ上げていきます。
その際、何か話し続けるか、歌い続けてください。
音量が適切になったら、リバーブをかけていきます。
あからさまにリバーブがかかっていると不自然になってしまうので、かけすぎ注意です。「歌ってて気持ちが良い」と思うレベルより、ほんの少しだけ控えめにします。
また、歌だけではなく三線のチャンネルにもリバーブをかけたほうが良い場合もあります。
弾いて歌いながら、他の方々の協力も得て、良い音を届けられるように調整と確認をしていきましょう。
ハウリングが出たら
ハウリングとは、マイクやスピーカーを通して音を出した際に「キーン」、「ピー」、「プーン」などの耳障りな音が響き渡る現象のことを言います。
ハウリングが起こる場合は、マスター音量の上にある「FEEDBACK SUPPRESSOR( フィードバックサプレッサー ) スイッチをオンにしてみましょう。
それでもダメならハウリングするマイクのチャンネルのイコライザーの各音域を少し左に回して、その音域を抑えます。
それでもやっぱりダメならリバーブを抑えます(それでダメならその人はマイクなしで歌っても会場中に聴こえる声の人です、きっと)。
ひとり、または複数人で、音出しをします。
順番に、上記の
- マイクのスイッチをオンにする
- マイクの音量とリバーブを上げていく(自分だけではなく、誰かが客席で音を聞きながら)
- ハウリングが出たら、ハウリングの手前まで音量やリバーブを戻す(抑える)などの対策をする
という作業を繰り返します。
そして、三線を弾きながらのソロ曲や複数での曲への音出し確認をしていきます。
STAGEPAS 600BTの使用方法と音出し確認は、以上です。
STAGEPAS 600BTの使い方と、音を調整する方法の説明は以上となります(もっと細かいことを知りたい方はお気軽に島袋に聞いてください、迷惑とかではなく逆に嬉しいので)。
ここからは、「このシステム(マイクやスピーカー)を使う意味」そして「効果的なマイクの使い方」を説明します。
なぜ音響機材を使うのか
生音をお届けするのがベストではないのか問題
集估館程度の広さであれば、正直こんな機材を使わなくともお客様に音はお届けできます。
では、なぜこんな苦労をしてまで使用しているのか、と言いますと、ひとつには「生音では非日常感を出すのは難しい」ことが挙げられます。
もし音響機材を使用しない場合、お客様にとって慣れ親しんだ音量、音響の環境で、普段の生活の延長線上に「沖縄の唄会」がやってくるわけです。
私たちが、すごく上手い演奏者ならそれで問題ないのです。
でも、私たちは、ちょっと自信がないな、という状況で演奏しているわけですので、こちらから「非日常」の演出をおこなって、「そこまで感動的ではないかもしれない演奏を、感動的なものに変える」必要があるのです(言葉があまり良くなくてごめんなさい、でもそういうことなのです)。
また、ふたつめの理由として「お客様にストレスをかけてはいけない」という意味もあります。
ボソボソとした挨拶、かすれたような歌声、ブツブツ途切れて響かない三線…。
ニライカナイの全員がそんな演奏をしているわけではないのです。みんな、ちゃんとできてるんですよ。
でも、人前に出たら緊張して、普段の実力を出し切れないことがよくあるのです。
そんなときに、音響的にも精神的にもバックアップしてくれるのが、このような音響機器なのです。
音響機器は、強い味方になり得るのです。仲良くしようじゃありませんか。
マイクの効率的な使い方
使用しているマイクは全て「ダイナミックマイク」と呼ばれる種類のものです。
このタイプのマイクは「入った音をすぐ電気信号にして機材に伝えちゃうよ」的な機能を持っています(コンデンサー型のマイクについては面倒なので割愛します)。
で、このダイナミックマイク、特に「歌い慣れてない人は口をめっちゃ近づける」必要があります。
詳しくは、良かったら下記の動画もご参照ください。
上記はボーカルについての話ですが、三線もやはり同じことが言えます。
マイクを、三線の胴(皮の貼ってあるタイコ部分)になるべく近づけて、でも弾いている右手に触れない場所に自分で調整してください。
長い記事となりました…。
お読みくださり、ありがとうございます。
私だけが解っていてもダメだったんだなあ。
前回の「『沖縄の唄会』の作り方」に関連する記事です。
唄会をみんなの手で作り上げるに当たって、この「機材を使う」部分がネックになるな、と当初から思っていました。
教えるのが面倒だから自分でやればいいか、と続けてきた結果、あれよあれよとたくさんの物事に追われる事態になってしまい、その大変さも説明できないまま、今に至ってしまいました。
先延ばしにするのは、島袋にとっても、みんなにとっても、良いことではなかったのですよね、本当にごめんなさい。
「機械を使うこと」がアレルギー並みに怖い、嫌だ、と感じる方もおられるかと思います。
でも、機械って、感情がなくてロジックだからラクなんですよ、付き合うのも使うのも。
今回、やっと私がこうして重い腰を上げて解説記事を作ったことで、少しでも「あれ、思ってたより簡単じゃない?」と感じてくださる方がいれば嬉しく思います。
泡盛片手に一晩中音響機器について語り明かしましょう。
では、また!!